寝首に接吻
こっくりこっくりと舟を漕ぐ。
悟さんを送り出して十二時間は越えただろうか。時計を見ると既に一時を越えようとしていたので、十二時間どころでなかった様だ。未だに彼は帰らず、このままでは明日になるかもしれないと思いながら、ベッドの上で枕を背にして本を開き直す。勿論寝てしまっても良いのだが、初日位待っていたかったのである。
そんな折、廊下の方から物音がした。女中の声と二つの足音が此方に近づいてきているのが分かった。急いでベッドの上で居ずまいを正そうとしていると、音もなく寝室の扉が開かれる。
「おかえりなさいませ」
慌てて上半身だけでもと三つ指をつくようにしてお辞儀をすると、驚きの声が前から聞こえてきたではないか。
「こんな時間まで起きてなくていいって言ったのに」
「今日ぐらいは良いかなと思いまし、て……ふぁ」
「僕としては嬉しいけどほどほどにね」
欠伸をしてしまった私に、苦笑を向けながら悟さんが近づいてくる。無事、お迎えが出来たことに気が緩んでしまったようでいけない。目にぐっと力を入れてぱちぱちと瞬きを繰り返していると、昼間と同じようにまた頭に手が乗せられた。
「はいはい、もうお休み~」
子供にするようにポンポンと撫でられるそれに少し笑いが漏れるものの、実際眠気が酷いのでお言葉に甘えさせていただく。素直に体制を変える私が面白かったのか、悟さんもクスクス笑ってきたので子供じゃないですよと少しムキになってしまった。
「子供でもなんでもいいから寝な」
これから湯浴みもあるだろう悟さんは、私の頭を数度リズムよく撫でた後、瞼が重くなった私を確認してか部屋を出て行ってしまう。私自身もその姿を確認する前にするりと意識が落ちていくのであった。
そうして日々できうる限りで見送りや出迎えをしてはや一ヶ月も過ぎた頃。
その日の夜も、少し帰りが遅くなると言う悟さんをリビングで一人待つことにして、九時には本館に部屋がある冴や当直のものもそれぞれの部屋へと下がって貰った。少し肌寒かったので、ブランケットだけ肩から掛けて時計を眺める。
十時までには帰るとメールが入っていたので、あと一時間ほどというところ。つきりと下腹部が痛んだ気がした。
□ □ □
カラカラと音を立てて引き戸を開ける。
ふと時計を見ると九時半を少し過ぎた頃だ。こんな時間にはほとんどの使用人も別館に移っているだろうと思ったし、扉は静かに開けたつもりだったが耳聡い者はいるらしい。何処からともなくとたとたと音が聞こえたと思うと、女中が二人かけてきた。こういう時に内装だけでなく外装も洋風――内装は和風モダンにした――に寄せるべきだっただろうかと考えてしまうところだ。
「おかえりなさいませ、旦那様」
冴さんが指をついて挨拶をする。
「こんな時間だからいいって言ったのに」
「いえ、そう言う訳には……お荷物頂戴します」
その声と共に、後ろに控えていた女中がさっと近づくので荷物を預ける。序で、御召し物もとの声もかかるので伸ばされる手に任せつつコートも脱いで渡してしまう。そうすると彼女は一礼して家の中へとそそくさと消えてしまった。
それを見届けると、リビングへと歩き出す足に合わせて、少し後ろに冴さんがついてくる。彼女は如何にも働き者過ぎる様で、ちゃんと休んでいるところをあまり見たことはない。これはこの家に来てから特に思う事が多くなった。そうやって思考を飛ばしていると、思っていた相手から声がかかる。
「旦那様。本日奥様はリビングでお待ちになっているのですが、少し顔色が悪かったのでもし何かありましたらいつでもお声かけ下さい」
もしと強調して言われたあたり、実際見てみないとわからないが気にはなる。早くなるなる足音に、反比例するように冴さんの歩調が緩まるのがわかった。
リビングの扉に着くころには、彼女の足が三歩程後ろで止まっている。振り返ると、お邪魔になりますので私はここでと頭を下げるのだ。相変わらず空気をよく読んでくれるので、大丈夫だと伝えて扉に手を掛ける。
扉を開いた先にあるソファは、一目見ただけでは無人であった。
目的の人物が居ないことに一瞬驚くが、何という事はない、彼女はソファに横になっていたのである。何なら少し呻き声が聞こえてくるではないか。急いで前に回り込み、そっと顔に手を触れた。如何やら熱はないらしい。
「あ、悟さん……すいません。おかえりなさいませ」
言いながら起き上がろうとする彼女に慌てて手を掛ける。
「ただいま、起きなくていいよ。横になっときな。大丈夫? 風邪でも引いた?」
「いえ、月のものが……どうしても腹痛が治らないのでどうしようかと思っていたんです」
どうやら生理らしい。風邪などではないことに少しだけほっとするが、急いで冴さんに頼ることにする。ちょっとまっててと頭を一撫でして、慌てる名前をそこそこに冴さんが控えているだろう部屋まで引き返す。もう寝るだろう所申し訳ないが、こればかりは許してほしい。
断りを入れつつ事情を説明すると、痛み止めをもって部屋を出ようとした彼女を止めて、あとは此方でやるからと宥めて休んでもらうことにした。名前も大事にしたくはなさそうであったし、僕だって二人の時間を少しでも過ごしたいからである。完全な私欲だ。
一度薬をもってリビングに入ってから、そういえば水だとキッチンに向かう。そうしてパタパタと動く自分に申し訳ないと言う顔を向ける名前はこの後たっぷり甘やかしてやろうと心に決めた。
コップと薬が手渡されて、少し抱えられる様にしながらそれらを飲み干す。ほっと一息つくと、横からも少し力が抜けたのを感じた。人肌が心地よい。
「ご心配おかけしてすみません」
「いーえ、取り敢えず薬効く迄もうちょっとここで我慢できる?」
「はい、それは勿論」
「よし、じゃあ僕はちょっとお風呂いくから」
そう言って頭を一つ撫でると、悟さんは立ち上がってお風呂に向かって行ってしまった。再度ソファに座り直して、ブランケットを手繰り寄せる。未だ痛むお腹を摩りながら、ふとこういった事は伝えない方が良かったのではないかという疑問が頭を擡げた。今まで、基本的に周りは同性の使用人しか居なかったので困らせてしまったのではなかろうかと気付いたのである。
悶々としている頭に再度後ろから足音が聞こえてきて、冴かと思って振り向くと、毛布を抱えた悟さんが迫っているではないか。驚いて声が出せないままにいると、彼は目の前まで回り込み私に毛布を巻き付けてくる。
「暑かったら取っていいから、取り敢えずはね」
そういって鼻歌を歌いながら、今度こそお風呂に向かう彼に金魚の様に口をぱくぱくとさせるしかなかった自分は何と滑稽であろうか。暫し静止した後、我に返って後でお礼を言わなければと思いつつ、静かに目を瞑る。
――と、朦朧としていた意識が足と背中に感じる違和感で引き戻される。
慌てて目を開けると、近くにある悟さんの顔がわざとらしくにこりと笑った。どうやら朦朧としていたのではなく、本当に寝てしまっていたらしい。急いで立ち上がろうとすると、おっと……と言いながら抱え直されてしまう。毛布も一緒に抱え込まれたので身動きが出来ない。
起き抜けだったので、感嘆詞のような意味のない音しか吐き出せない口はまたしても金魚の様である。そんな私を笑いながら、悟さんはずんずんと寝室へ向けて足を進めてしまうのだ。
「よいしょ……っと、はい着きましたよ~」
「あ、りがとうございます」
器用に途中の扉も開けつつ、最後はゆっくりベッドに下ろされた。しどろもどろになってしまったお礼には、あとから苦笑が込み上げそうになる。そうして、もう一度改めてお礼を言おうとした私を遮るように悟さんはてきぱきと私に巻き付く毛布を剥がして、再度かけ直し掛け布団までかけてくる。早業に驚いている間に悟さんも布団の中に入ってきて、いつもは少し間を空けて寝ているはずがお腹に手が乗ってきた。
「……あの、もう薬も効いたみたいですし大丈夫ですよ?」
「ちょっとでもあっためといた方がいいでしょ、重い?」
「いえ、重くはないんですが……」
「ならもう寝よ、お休みー」
この話は終わりとばかりに目を閉じ、最後に更に近づく動きを感じる。どういうことなのか分からないが、もう部屋は暗い上に後は寝るだけなので大人しく寝ると言う選択肢しかない。
悟さんは元々距離感が近い方だが、就寝の際には触れることはなく、稀に朝に近くに居るのみなので少し驚いてしまったのである。
「おやすみなさいませ……」
自身の戸惑う声が闇に吸い込まれていくようだ。
しかし、よく考えれば一連の動きは私の体調不良に対する悟さんの優しさなのだと理解すると、段々驚きも落ち着いてきた。このお腹の上に置かれている手も、彼の看病の一環なのだなと考えるとすとんと理解が出来て、彼の掌からじんわりと広がる熱が眠りへと誘う。
その熱に身を委ねて、その日はゆっくりと微睡みの先へと落ちていった。
□ □ □
日々が過ぎ去り、十一月も終わろうと言う頃。私は一人焦燥感に駆られていた。
というのも、悟さんのお誕生日が近いからである。主に贈り物についてなのだが、以前の夜の反応から女性には慣れているようにも思われるので、そのような方は贈り物などを貰い慣れていそうなため、何を贈れば喜ばれるのかが分からない。昨年、二十歳のお誕生日をちゃんとお祝いすることが出来なかったことから、一人で悩んでも仕方がないと硝子さんにメールで相談をしてはみたが、何を贈っても喜ばれるの一点張りなのだ。
彼女は現在忙しい時期らしく、ここ何ヶ月も会えていない。その為、メールでしかができない程なので、余り煩わせたくはない思いから、あとは自力で考えるしかないと言うことになる。
「どうしましょう……」
口から零れた小さな困惑は、すぐ横に控えていた冴に掬い取られた。
「如何なさいましたか?」
「これといった事ではないんですが……」
冴に相談するのはどこか気が引けてしまう。しかし、ここまで来て頼れるのは冴しかいないのではないのか。悩みながら言い淀む私をみて、冴はいつもの頼もしさを見せるのだ。
「名前様、私は貴女様のお力になるためにいつも傍に居るのですから、何かあればいつでも頼ってくださいませ」
生まれた頃からの仲は強い。その言い方は狡いともいえる。
「冴は本当に言い方が上手ですね。そう言われてしまったら甘えてしまいます」
「最近奥様が甘えることが減ってきましたので、寧ろ甘えて頂きたかったころです」
クスクスと笑い合う声が室内に響く。
「……それでしたら、一度外商の方に聞いてみましょうか」
悟さんへの贈り物に困っているという話をすると、暫し迷った後に思いついたような声が上がった。
「がいしょう……」
「五条家にて担当されている方から引き継いで来られた、百貨店の外商員の方です。このお屋敷の調度品などもその方と旦那様で選定されたとか……普段の食材などもその方を通して購入しております」
「まぁ、そんな方が居られたんですね」
「ご存じないのも無理はありません、そういった方は基本私たちの棟までしかお通ししませんので……兎に角、その方でしたら宝飾品等にも明るいので、一度相談してみるのも一つの案です。」
この家がどうやって回っているのか、知らないことがまだまだあるのだろうと思うと少し恥ずかしさも出てくる。無知の知というやつだ。その点、冴はそれらをすべて把握しているのだろうから凄い。
「冴、ありがとう。その方に相談するのはとってもいい案だとは思うんですけど、贈り物を購入するとなると沢山お金が必要でしょう? そのお金も結局悟さんのものだから、なんだか気が引けてしまいます」
案としては良いのだが、如何せん私の一存では決めかねるのだ。私は、言わば穀潰しも同然だと自身が一番理解している。悟さんの優しさに甘えていること、その優しさ故に本来の目的である世継ぎを産むことからも遠ざかっていることも解っているのである。その上、高価だろう物を勝手に購入すると言うのは、例え悟さんに贈る物でも気が引けてしまうのだ。
そんな私の思いを全て理解したように、冴はにこりと笑う。
「奥様らしい答えですね。では、一度ご本人に相談されるのはどうでしょう?」
“ご本人”とは、悟さんの事だろう。また、振出しに戻ってしまったが、余り悩んでいても時間が過ぎるだけで、何も解決しそうになかった。丁度、今日は数日振りに帰宅するらしいことを聞いていたので、機会が合えば思い切って聞いてみようかと考えて、日が暮れていく。
夕飯は先に食べておいてとメールを受けて、静かな夕食の時間を過ごす。
その間も、考えるのは贈り物の事で、どんなものであれば喜んでもらえるのだろうかと頭を悩ませ続けるのだ。静かさが更にそれを加速させる。
考えすぎても良くないと、箸をすすめる事に集中して、早々に湯浴みに向かうことにした。未だ、悟さんは帰りそうにないのだ。
そうして、お風呂からも上がってリビングでのんびりとしていると、後ろから足音が聞こえてきた。きっとお帰りになったのだと体制を整えるとともに、扉の開く音がした。
「たっだいまーー!」
「おかえりなさいませ、楽しい事でもあったんですか?」
大きな声と共に悟さんが帰宅した。顔は赤くないのでお酒を飲んだわけではなさそうだが、上機嫌であることに変わりはない。
「いやー、明日予定してた任務が無くなってさ、急にオフ! 明日はお休みってワケ!」
「ふふっ、それは楽しみですね」
鼻歌を歌いそうな勢いでテーブルに座る悟さんは、どうやら先に食事を摂るようだ。女中たちがいそいそと準備を始めるのをみて、自身の傍に置いてあった松葉杖に手を伸ばす。よいしょと小さな声を出しながら立ち上がり、ゆっくりと食卓に近づくと、悟さんに少し不思議そうな顔をされてしまった。
「あれ、名前ってもうご飯食べたんじゃなかったの? もしかして待ってた?」
「すみません、先に頂いてしまいました」
苦笑しながらゆっくりと向かい合う席に座ると、ご飯に付き合ってくれるのかと嬉しそうに聞かれてしまった。勿論、最近お話する機会が少なかったこともあるので、それも多分に含まれるのだが、夕方に悩んだことをこの場で聞いてしまいたいのが本音である。明日が休みであれば早く体を休めたいだろうし、こういうことは直ぐに聞いてしまう方が此方の踏ん切りもつくものだ。
そうこうしているうちに、彼の前には着々と温かな料理が運ばれてくる。切り出し方が難しいが、致し方ない。
「悟さん、お食事の後ででもご相談がありまして」
「ん? 今でいいよ」
食事の手を止める悟さんに、温かいうちに食べてくださいとお願いをしてみる。此方から話しかけていてなんだが、手を止める意図はなかったのだ。それを察してか、食べておくから話してよと続きを急かされてしまう。
待たせてしまっても仕方がないので、観念して話をすすめる事にした。
「もう直ぐ、悟さんってお誕生日でしたよね」
「あ、誕生日プレゼントってこと? それ言っちゃったら台無しじゃない?」
「え、そうなんですか! すいません、もうご相談するしかないかと思って」
「あー、待って待って、サプライズとかだと言っちゃだめだけど、聞いてくれるのは嬉しいから」
どうやら彼は私がサプライズとやらをすると思ったらしい、プレゼントについて聞くのは問題ないとのことで、話を続けることになった。目の前でいつもよりゆっくりと進む食事に、早くこの話を終わらせなければと気が急いてしまう。
「えぇっと、その、”プレゼント”について何が欲しいのかなと……買い物にも行けませんし、悟さんは何でもお持ちですから」
そこで言葉を切る私を他所に、悟さんはにこにこと笑顔で私を見つめ続けているではないか。
なんだろう、何を思っての笑顔なのかが分からず困惑してしまう。戸惑う私に気付いて、彼がごめんごめんと断りを入れた。
「名前がそうやって悩んでくれるだけで嬉しいなーって、でも、強いて言うなら去年貰い損ねたやつがいい」
指をぴっと上に立てて、妙案だとでもいうように声高に宣言される。本当に妙案であれば良かったのだが、対象がよろしくない。
去年貰い損ねたものと悟さんが言っているのは、私が彼とそろそろ離れることになるだろうということも兼ねて用意したものだ。それを知った悟さんが怒ってしまい、受け取って頂けなかったものだが……確かにまだ保管はしている。しかし、今となってはあの中身を渡すのはどうかと憚られてしまうのだ。
「もしかして、捨てた?」
言い淀む私に、悟さんが此方を伺う様な顔をする。捨ててはいないが、代替案は他にないのだろうか。彼が望むことに意を唱えたい訳では無いが、素直に返事が出来るものでもなかった。
「……探しておきますね」
苦し紛れに出たのは、問題を先送りする返答だけであった。
どうしよう、目の前の冴に目線を向けても、大丈夫ですよとしか返ってこない。
今日は、悟さんの誕生日である。手元には昨年渡しそびれたものが収まっていた。
主役は仕事を急いで終わらせて、もうリビングで待ち構えているのだからこれ以外に選択肢がない。
食事もケーキも食べ終えて、プレゼントだけだねとニコニコ笑う悟さんが、久しぶりに意地悪く感じてしまい渋々物をもってリビングに向かうのだ。さっと渡せばどうということはないのかもしれない。
決意を新たに扉を開けると、待ちきれなかった彼に誘われて、ソファに隣り合うように座った。
「此方が……ご所望の品です」
目線を合わせずに渡すと、わーいと声が聞こえて、包みを開ける音がする。
「これって……」
静かになった悟さんの手には、額縁が収められていた。その額縁の中には、様々な花が咲き乱れ、元の姿とは一味違う華やかさで彩っている。
「悟さんから頂戴していたお花をそのまま捨てるのが勿体なくて、少しずつ押し花にしていたんです」
つまらないものだと思われるだろうと、顔に熱が集中するのを感じた。もっと、気の利いたものを選べば良かっただろうか。今更言っても仕方のない事だが。
後悔と羞恥に下を向いてると、横から抱きしめられる感覚に息を飲む。
「今だけ許して、これ嬉しかったからさ」
何処か子供の様な言い方に、此方が驚いてしまった。
「このようなもので、よろしかったんですか?」
その言葉に、肩を掴まれて顔を見つめられる。彼の眼は真剣だ。
「だって、わざわざ残してくれてたんでしょ。嬉しいに決まってる」
「もっと高価なものの方が良いのかと思っていました」
「こういうのは値段じゃないんだよ、名前が二人の思い出を大事にしてくれたんだーって思ったら嬉しくなるの!」
「そういうものですか……」
「そういうものです! これ、寝室に飾っていい?」
止める間もなくそのまま寝室に飾られて、その夜は少しだけ照れくさい気持ちに包まれながら眠りに落ちた。